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ゴールに目を奪われていては、サッカーは見えてこない

「現役目線」――サッカー選手、岩政大樹が書き下ろす、サッカーの常識への挑戦

内面を嗅ぎ取れるようになれば違うサッカーが見えてくる

 ここで言いたいのは自慢ではありません。毎試合、同じようなことを考え、挑んでいますが、勝つ時もあれば負ける時もあります。その試合もたまたま僕たちが勝ったに過ぎません。ただ、サッカーというスポーツがいかに人の心理の部分に大きく左右されるか、そして90分の戦いがいかにゴールのシーンだけで語れないかを知ってほしいと思います。

 また、ジェフの選手に落ち度があったという話でもありません。連勝を重ねているチームや調子のいいチームは大体同じような傾向にあり、戦い方を変えたりするよりもそのままの勢いで90分間挑むことがほとんどです。だから、いつも対策という面では、調子の悪いチームよりも、調子のいいチームとの対戦の方が意外と想定しやすいものです。

 この試合をビデオで見返してみると、ただ単に、「前半はジェフのペース。そこで点を取れなかったことでファジアーノが後半にリズムを掴んで、一気に2ゴールで勝利」と見えてしまいます。ゴールで試合を語れば、それがその試合の大方の見方でしょう。

 しかし、ジェフにボールを敢えて握らせた、と考えると別の見え方が見えてきます。
 つまり、ボールを保持しているかどうか、ラインが高く設定されているかどうか、押し込んでいる方はどちらか、という外からの視点だけではなく、その試合までのチームの調子や心理、そして90分という時間の中でのゲームプランニングといった、内側の視点まで想像してみると、同じ試合を見ても違う景色が見えてくるのです。

 この試合、ジェフは終始、勢いに乗っていたはずです。「それまでの試合のように勝てる」と思っていたでしょう。それに対し、僕たちはあえて、向かっていくのではなく、受けた。そして、受けたままだと思わせた上で、攻勢に転じました。修正する間のない後半まで相手に勢いをキープさせることで、勝機を見出したわけです。試合前の想像が綺麗にはまった稀有な例で、その意味で、会心の試合と表現したのです。

 サッカーの魅力にゴールが真っ先に挙げられるのは間違いありません。あのゴール前の緊迫した空気、ゴールが決まった時の熱狂、興奮はサッカーの醍醐味です。
 しかし、僕たち選手はあくまで、90分の戦いをしています。一つの試合をゴールだけで語ることはできません。
 90分の中には、戦術的にも技術的にも、そして心理的にも様々な駆け引きが存在します。それも全て、90分の中で相手よりも多くのゴールを取るためではありますが、そうしたゴールの確率を少しでも上げる90分を通した戦いにも、サッカーの面白さが詰まっていると思います。

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岩政 大樹

いわまさ だいき

東京ユナイテッドFC

サッカー選手

1982年1月30日生まれ、35歳。187cm/85kg。ポジションはセンターバック。

山口県出身。周東FC、大島JSCを経て岩国高校サッカー部でプレー。東京学芸大学在学中に注目を集め、2004年鹿島アントラーズに加入。

2007年~2009年鹿島アントラーズのJリーグ3連覇に貢献。自身も3年連続Jリーグベストイレブンに選出される。

2013年鹿島アントラーズを退団。2014年にはタイプレミアリーグのテロサーサナでプレー、翌年ファジアーノ岡山に加入。

強さとクレバーさを兼ね備えたプレーでディフェンスラインのリーダーとして活躍する。2017年シーズンより関東サッカーリーグ1部の東京ユナイテッドFCに加入(コーチ兼任)。東京大学サッカー部コーチも兼任。

2016年シーズン終了現在で、J1通算290試合出場35得点、J2通算82試合で10得点。日本代表国際Aマッチ8試合出場。

2017年9月初の著書『PITCH LEVEL 例えば攻撃がうまくいかないとき改善する方法』を上梓。


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